第102回 2009/04/01 |
「新年度を迎えて」 |
昨日で第一四半期が早くも終了し、今日から第二四半期となります。多くの上場企業の決算がなされ、これから株主総会へ向けての期間に実績値が新聞紙上に報道されることと思われます。電機関連大手メーカーの決算予測は、この間軒並み大幅な赤字と報道されてきましたが、実際のところはどのような数字になるのでしょうか。3月中旬から20日にかけてのまるで春の陽気は、最週末に寒波と強風をうけ、花冷えの月末となりました。景気が気候と同様の冷え込みを見せないことを祈るばかりです。 関東地方では例年より開花が早まった桜も、月末の寒さで満開時期はほぼ例年並みとなりそうな状況ですが、皆様お住まいの地域はいかがでしょうか。日本の官公庁や大部分の大企業、そしてほとんどすべての学校が今日から新年度を迎えます。新たなステップへの飛躍を期して胸弾ませる若い方々も多いのではないでしょうか。CECもこの飛躍すべき月に、これまでご紹介してきました新製品をすべて発売開始にこぎつけるべく全力を挙げております。今回は、その新製品の一つと、その関連製品の企画を決定いたしましたのでご紹介させていただきます。 CECは、2002年3月に、初のヘッドフォンアンプHD51を発表し、ヘッドフォンで音楽を楽しむ方々にかなりの好評を頂き、後継機HD53 そしてHD53Rと引き継いでまいりました。 一時期停滞していたヘッドフォン音楽業界に一石を投じてきたと自負いたしております。この7年間の歴史を踏まえて、新たに皆様のご評価を仰ぐべく今月発売開始を予定していますモデルが、「HD53N」です。 この7年間のヘッドフォン業界での大きな変化は、アメリカの放送スタジオ関係者が使用し始めたバランス型ヘッドフォンの登場でした。皆様方ご存知の通り、従来の、そしてまた現在でも主流のヘッドフォン端子は、直径の大小(6.3mmと3.5mm)はありますが、段差のある一本のピンで構成され、ピンの各段がLチャンネル、Rチャンネルとアースに対応しています。スタジオなどのような業務用の現場では、録音機器、再生機器、ミキシング機器など多くの多機能をもった音響製品と、それらを接続する多くのケーブルが混在しています。当然そうした現場では、外乱ノイズが発生することは避けられません。そこで、そうしたノイズの影響を極力低減しようとして使われ始めたのが、最初からLチャンネルとRチャンネルを独立的に分けてアンプから取り入れようとしたのがバランス型ヘッドフォンでした。 両チャンネルを分離させるだけでしたら、RCAタイプのプラグ接続端子でも可能なのですが、ノイズ低減対策として業務用に開発されて久しいXLR端子を使用したのです。ちなみにXLR接続端子は、米国のITT-Cannon社の開発した端子で、国内ではキャノン端子とも呼ばれています。(カメラや複写機で有名な日本の光学メーカーのキヤノン株式会社とは異なります。同社の英語名はCanonです)現在では、バランス型設計には不可避なXLR端子ですが、信号をHOT(正相)とCOLDそしてアースに3分割して平衡転送し、ノイズからの影響を低減しようとしたものです。また当初混乱した3本のピンの割り当ても、2番ピンをHOTとすることが1992年に、AES(Audio Engineering Society)によって決められています。 当社のヘッドフォンアンプは、2002年当初より内部回路はバランス型の設計を前提としてきましたので、その意味でヘッドフォンのバランス型登場は、まさに朗報でした。更に好都合なことに、ノイトリック社(リヒテンシュタイン)で開発したバランス型出力端子の中には、そのセンターにアンバランス型出力を併せ持つものがありました。こうして、この価格帯では世界でも初めてのバランス型ヘッドフォン出力を備えたヘッドフォンアンプ、「HD53N」を企画、開発してきたのです。 他方で、当社内部で協議してきた第1点は、バランス型ヘッドフォン自体がどれだけ普及しているのだろうかという点でした。当社の調査では、バランス型ヘッドフォンは、海外の著名なブランドの多くが発売していますが、そのすべてが残念ながら大変高額でした。安いものでも10万円を下回るものは見当たりませんでした。結果として、未だあまり広く普及するには至っていないようです。 また第2点として、果たしてバランス型ヘッドフォンを使用して、従来のアンバランス方とどれほどの向上が見られるのだろうかということでした。そこで、当社のもつ唯一のヘッドフォン(業務用)、HP-53をバランス型に再設計し、その効果のほどを確認してみました。従来型とは一段階を画す精密な調整、材料調達が必要です。こうして試作したバランス型のHP-53の効果のほどは、絶大でした。ある意味でまったく異なったレベルの音楽世界が広がり、聴き取ることができたのです。 こうした過程を経て、ヘッドフォン音楽界に寄与することができるのではないかと期待し、HD53Nに続いて、比較的お求め安い価格でバランス型ヘッドフォンを、「HP-53 FB(フルバランス)」として発売することを決めました。発売予定は6月、価格は29,400円(税込み)を予定しております。 CECを支えてきた設計の柱の第一は、ベルトドライブ方式のCDトランスポートメカニズムです。またその第二は、純A級LEFアンプ回路です。そして第三は、CDプレーヤーにもそしてアンプにも共通しているバランス型回路設計です。今回発売を決定した、「HP-53FB」は、その第三の柱のシンボルでもあります。新たなステージを迎える4月に、「HP-53FB」発売の企画を決定できたことは、小さな誇りでもあります。 花冷えで始まった4月ですが、まもなく全国各地で桜の満開宣言が聞こえてくるものと思われます。新たなステージに挑戦されようとしている皆様とともに、CECは歩んで生きたいと願っております。
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