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第98回 2008/12/01
「早くも今日から師走です。」

 旧暦の表記のなかで、12月を表すこの師走だけが新暦にそのまま適用され、今日では日常の報道や、会話の中で使用されています。北海道、日本海側の東北北陸地方では、かなりの降雪が報道されています。2008年の師走、皆様どのように迎えられていらっしゃるでしょうか。

 東南アジア、タイでは12月1日現在すでに首都バンオックの空港、スワナンプーム空港が、反政府勢力によって占拠、閉鎖されて1週間が経過しました。タイの基幹産業である観光事業にとどまらず、タイ経済全体に対する影響は5800億円に上ると報道されています。また停止された国際郵便は25,000通とも報道されています(12月1日現在)。

 海外と取引のある方々にはもはや常識的なことですが、現在、封書や小型包装物を含む郵便物は、従来の政府管理による郵便システム(例えばかつての日本郵政)とは別に、私企業が独自に配送網をめぐらし(例えばヤマト運輸)、互いにその利便性を競い合っています。

国際貨物便

国際的には、既に私企業による小型包装物の流通システム(例えばDHL, FeDex, EMS等)が、各国主導のいわば官製国際郵便システムを量的にははるかに凌駕しているのが実情です。しかしその国際的な物流は、航空便を前提としていますので主要空港が閉鎖されるとなると、別の空港を一時的に探す以外に方法がなくなります。それはまったく新しく、いつ不要になるかもしれない新しい空輸での物流システムを確立することを必要とし、膨大な経費、それも不必要な経費を必然化しますので、物流各社が容易には踏み切れないでいるのです。

 郵送システムの膠着化の最大の被害は、実は最終的には金融システムに及びます。国際的な資金決済は、ハードコピーによる原本を必要とします。例えば国際間の取引は、輸出信用状の決済で行われることが多いのですが、その決済に必要な様々な書類の写しはパソコンを介したインターネット機能で確認補填されますが、原本はそうはいかないのです。原本照合が前提となった決済方式では、郵便物の膠着は、資金決済の凍結を意味するのです。一番単純なのが小切手です。これはコピーに何の意味もありません。タイのような、目下政局が不安定な国では、海外の銀行に口座を持つ個人、企業が多くいるといわれています。そうしたタイ企業が海外銀行名で発行する小切手は、それ自体を取引先に届ける必要がありますが、それすら凍結されているのが現状です。

 主要国際空港の閉鎖は、旅客者や貨物の移動に不便をもたらすだけでなく、むしろそれ以上に国際的な資金決済に支障をもたらすことによってその経済全体への影響力(被害額)を増しているともいえます。反対勢力の主たるメンバーが、今回のデモンストレーションにそこまでの影響力を及ぼすものと考えているかどうかは定かではありませんが、経済に及ぼす事態の深刻化が大きな悲劇を生じさせないことを祈るしかありません。

 さて昨日、11月30日の報道は、東海道新幹線をその開設当時走り抜けた、0系新幹線車両の最終走行を大きく取り扱っていました。東京オリンピックの開催に標準を合わせ企画、工事着工された東海道新幹線が開通したのが、オリンピック直前の1964年10月1日でした。高速確保のため、従来の鉄道の線路幅とは独立した、より大きな幅を採用し、その後、在来線=狭軌、新幹線=広軌と呼び分けられてきました。

0系新幹線

更に一切の踏み切りを排除、減速要因となる小半径の軌道の排除(最低半径2500メートル)とした当時では画期的な工夫が採用されてきました。

 その当時の世界最速を誇った0型新幹線の東京・大阪間の開通以来、44年間を経ました。その後新幹線の車両には次々と新型が導入される一方、路線もまず山陽新幹線と延長され、東北新幹線、上越新幹線、山形新幹線と新路線が敷かれてきました。人の移動が、幹線の多様化により、より広い地点へとより高速化してきた約半世紀でした。

 他方で、幹線から外れた地方、地域と主要経済圏の格差の拡大が、小泉改革による資本活動の自由化の推進により、個人所得の格差の拡大とともに次第に声高に指摘されてくるようになった今日この頃です。今年夏場を過ぎて、急遽米国経済のサブプライムローンシステムの破綻に伴い、世界的な金融システムの危機が問題視されてきました。いまや国際金融恐慌という言葉すら、日常語化され、新聞紙上に使われるようになっています。そうした中、わが国政府は、その歴史上初めて、二代に渡り首相が自ら引責辞任しました。三代目の首相の国民的な承認を確認する国政選挙は、棚上げにされたままです。

 世界にその技術の先端性を誇示した0系新幹線が終了するその年末に、世界的な経済に不安の暗雲が立ちこめ、東南アジアの一部では未曾有の経済的損失へと進みかねない反政府活動があり、更に経済の深刻な不況局面への打開策を巡ってわが国政府の方針は明確さを欠いたまま新年を迎えようとしています。

 いまだに、地球温暖化防止のための省エネ活動というキャンペーンがNHKをはじめとした主要メディアで語られています。私は、現在地球がその歴史上で温暖化に向かっていることに疑問を持ち、温暖化の主犯が二酸化炭素の増大だとされることにも疑問を持つものです。しかし、不必要なエネルギーの使用方法を改善、もしくは節約できるエネルギーの使用を工夫することに何らの疑問も持ちませし、推し進めるべきであると考えるものです。地球温暖化防止のために省エネ活動を考えるのではなく、より単純に、これほどまでに不安定な、悪化していることは間違いない経済状況の下で、経済的な「節約」のために省エネ活動を推進すべきと思えるのです。音楽をその最良の再生システムで楽しむことは、決してその流れに逆らうものではないと確信しています。それは、暗くなりがちな環境を打破することにはなりませんが、打破すべき力を与えてくれると思えるのです。2008年最後の月、どうか皆様健康にお過ごしください。







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