第92回 2008/06/01 |
梅雨の季節を迎えて |
すでに沖縄地方では梅雨に入っているようです。関東地方でも、梅雨入りを感じさせる今日この頃ですが、皆様お住まいの地域ではいかがでしょうか。 5月の最終週、中国杭州(浙江省)へと出発し、そこから、東莞(広東省)、その後香港と移動。 台湾台北市を経由して戻ってきました。この間、最初の杭州から、関東地方とは比べ物にならない暑さと高い湿度に出会い、意識せずに持参した半袖のワイシャツに頼ることしきりでした。 最後に立ち寄った台湾では、先の総選挙の結果、従来の陳政権に代わり、5月20日より国民党の馬英九政権が成立しました。親中国政策をとることが予測された新政権ではありますが、矢継ぎ早に新しい対中国政策が発表されています。 まず、一定の限度付きとはいえ中国人民元の台湾円への両替をまもなく解禁することが発表されました。次いで、台湾の主要空港である台北・高雄と、中国の北京、上海、廈門、広州との直行便を段階的に開く(今年7月4日予定)というものです。当初は週末だけのチャーター便とし、以降これをデイリー化し、更に台北市内の松山空港、台中空港をこれに加えるというものです。この貨幣と人の動きの自由化へのステップは、おそらく東アジア全体の人の動きの流れを大きく変えていくことになるでしょう。 ここ数年、実際上中国への海外からの資本投資中、台湾の占める割合は非常に高いものがありました。また逆に、台湾では主要産業の大部分が生産拠点を中国へ移していきました。経済的には既に台中関係は極めて密接な関係を築き上げてきたのです。そこに、登場した親中国的政府の台湾での登場は、この密接な経済関係の上での、さまざまな政治的な規制,障害を取り除きつつあるということなのでしょう。台湾、香港、中国という大きな経済圏が今後東南アジア全体への影響力を増やしていくことは間違いないことでしょう。
さて台湾では、先月(5月)興味ある、全国的なインターネット投票が行われました。国の象徴となる鳥を決めようというものだったのです。これは、「台湾永続生態協会」と「台湾国際観鳥(バードウオッチング)協会」とが協力して、「台湾の国鳥」決定に人々の参加を呼びかけたのです。結果的には、和名「ヤマムスメ」、現地名、台湾藍鵲(あおかささぎ)が総投票集110万票中50万票を獲得、このヤマムスメが台湾のシンボル鳥と決まりました。ちなみに「ヤマムスメ」は、スズメ目カラス科で英名Taiwan Magpie もしくはFormosan blue magpie, 学名Urocissa caerulea、台湾の固有種です。 http://www.asahi-net.or.jp/~XC9T-TKN/ph_htm/ph_taipei.htm 残念ながら私は見かけたことがありませんが。時として、大都市台北周辺でも観察できる体長60cmを超える大きく、青色の目立つ野鳥のようです。ところがこの台湾の国鳥選出は、中国での作業と並行したものだったようです。 中国では、2008年の北京オリンピックをにらみ、2003年国家林業局と中国野生動物保護協会とともに国鳥の選定に取り掛かりました。候補となる鳥を10種類に絞り、翌2004年、インターネット投票でタンチョウが全投票の65%を獲得した「タンチョウ」が選ばれました。 中国名では丹頂鶴。ところがこのタンチョウの英名の一つは、Japanese Crane (他に、Red-crowned Crane, Manchurian Crane)であり、より悪いことに学名は、Grus japonensis というのです。英名、学名ともに、意味するところは日本(の)鶴です。古来中国の文学に表記される鶴は、タンチョウを意味していたと思われるものが多く、また仙人と同一視される神聖かつ長寿のイメージが中国の人々にはあるようです。そのような鳥の学名や英名が日本鶴であることが、次第に広く知られることになってきました。中国を象徴する鳥としては、いかがなものかという異議申し立ても説得性があります。こうして今現在、学名を変更させるべきだという強硬派的な見解と、別の鳥を選ぶべきだという見解が交差する中で、中国の国鳥は、最終決定を見ていないのです。 ところで、日本のナショナルフラッグ、日本航空のシンボルであった鶴のマーク(鶴丸)もこのタンチョウを擬したものですが、今日6月1日から新しいものに置き換えられると報道されています。日本では、国の鳥がキジ、ナショナルフラッグのシンボルが、国の特別天然記念物のタンチョウでした。この「鶴丸」が日本のナショナルフラッグから消えるのですから、中国の人々もあまり学名にこだわることはないように思われるのですが、いかがでしょうか。 |