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第87回 2008/01/01
新年明けましておめでとうございます。

 子年(戊:つちのえ)の2008年が明けました。年明けのNHKの番組で、輝かしくも鮮明な初日の出の様子を紹介しておりましたように、関東地方では快晴、ほぼ無風の元旦となり、正月も穏やかな日々が続いております。皆様お住まいの地域ではどのようなお正月を迎えられましたでしょうか。ご家族ともどもご健勝に良いお正月を迎えられたこととお喜び申し上げます。

 本年2008年、世界の耳目を集める最大のイベントは、8月8日から開催される、中国北京でのオリンピックではないでしょうか。東南アジアで第二次世界戦争後、最初に開催された1964年の東京オリンピックの経験と結果は、その後の、ソウルオリンピック(1988年)、そしてこの北京オリンピックに大きく影響を与えているように思われます。

 東京オリンピックが開催された1964年、日本は「所得倍増計画」のもと、経済的な高度成長の真只中にありました。それを象徴した国家的な社会資本投資(インフラストラクチャー)の代表が、首都圏高速道路網の建設と、東海道新幹線の敷設、開通でした。この東京オリンピックをはさむ前後15年間の間に、平均年間経済成長率は10%の高さに及びました。この間に日本はOECD加盟が承認され、いわゆる「先進国」の仲間入りをしたと自称できるようになりました。また、現地ではパルパルオリンピックと愛称された(8は韓国語読みでパル)1988年ソウルオリンピック前後15年間の韓国の経済成長率も9.3%を記録しています。こうした側面から見ますと、東南アジアでの過去2度のオリンピック開催は、国家経済復興と成長のシンボルであったといえます。その意味で、中国政府当局のこのオリンピックにかける意気込みの大きさは十分予測できるものがあります。

 中国は既に世界の生産拠点国としての地位を不動のものとしつつあります。北京では今、市内の地下鉄工事が空港の拡張整備工事とともに急速に進められています。また中国最長となる北京・上海高速道路の開通以降、全国に高速道路網を整備する壮大な工事が進められています。また、中国当局の予測によれば、今後対中資本投資は、1,000億ドルに達する(そのうち直接投資は600億ドル)と公表されています。北京オリンピックというイベントを前後とした、様々な波及効果も伴いながら、経済押し上げ効果が相当のものとなるであろうことは容易に予測がつきます。

 しかし、インフラ整備の名の下、道路、建物の建設や、鉱工業製品生産の拡大、拡張が国家経済政策のスローガンであり、それを国民が容認、歓迎してきた東京、ソウルと現在を隔てるものは、経済成長波及効果の及ばない影の部分であり、また反作用を及ぼす生活環境の悪化であるともいえます。現在の北京で最も危惧されているのがいっこうに改善されない大気汚染の劣悪化に代表される自然環境整備の立ち遅れです。また、沿海部大都市の経済繁栄を支える地方都市の貧困化、地域格差の一層の拡大は、昨今のメディアでも大きく取り上げられています。

 長いスパンで見た場合、日本経済はオリンピックから9年後、第一次、第二次のオイルショックという経済的な大打撃を1973年に受けました。また韓国は、事実上の国家経済破綻宣言ともいえる、国際通貨基金(IMF)の管理下に入る道を、パルパルオリンピックから、日本と同じ9年後の1997年に選択しました。国家経済構造の異なる日本と韓国ではありますが、最大の経済的なブームがそれぞれ異なった原因により引き起こされたとはいえ、10年を待たずして一挙に奈落へと転じたことには注意を払う必要があります。オリンピックを一大国家的イベントとして押し上げる、政治的経済的な大きな高揚力が、少なくとも東南アジアの過去の二カ国では10年間維持できませんでした。今回の北京を推進する経済規模は、東京、ソウルを大きく上回っています。プラスであれマイナスであれ、その及ぼす世界経済全体への影響力は無視できないものとなるでしょう。大気汚染や地域格差の拡大といった、どちらかといえば国内問題と把握されがちな課題以上(これとて本質的には国際的な連鎖が皆無とはいえません)に、北京以降10年の経済結果の及ぼすであろう世界への影響に危惧を抱いているのは私だけでしょうか。

 さて、2008年は、団塊の世代の2期生、1948年(昭和23年)生まれの方々が還暦を迎えます。干支では最初のネズミの年でもあります。第二次世界戦争後誕生した世代が、戦後60年余りを経た現在の世界の推進力となる人々への知的な財産として生き残っていけるかどうかが問われてもいるように思われます。北京オリンピックへ向けての大きな政治的経済的なうねりの中で、もう一度足元を見直しながら着実な前進を見きわめて行きたいと思う新年です。今年一年の皆様のご健康とご多幸を心からお祈り申し上げます。

 




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