第33回 2003/7/01 |
2003年もちょうど折り返し点を回ろうとしております。6月20日過ぎに沖縄では梅雨明け宣言が出されました。ここ関東地方での梅雨明けもそう遠いことではなさそうです。いまだじめじめとした天候下にお暮らしの皆さん、どうか食べ物にはご注意のうえ、健康に音楽生活をお送りください。 SARS禍の一段落ついた中国広東省東莞市に2ヶ月ぶりに行ってまいりました。当社の設計環境上も、また工場運営上も、SARSの影響は少なからざるものがある現実に、「百聞は一見にしかず」の思いでした。中国政府当局がSARSを正式に認めて以来、まず人々の、省内外に止まらず、省内でさえも往来に大幅な制限と管理が加えられました。また各工場とも、それぞれ千人単位の従業員を、「従業員寮」という密度の高い空間に収容しているのですから、まず自社の従業員の徹底した健康管理、それから、必要以上とも思われるほどの他工場からの人の出入りを制限せざるを得なかったのはやむをえない処置だったかもしれません。 こういう環境下では、新製品を設計していく上での試作品の入手が大幅に遅れます。更に、試作品をめぐる技術上の「顔を突き合わせての」打合せも渋滞気味になってしまいます。新製品の開発には設計図面完成の後、試作品の作成、検討の後、金型の作成、検討、手直しの過程が不可欠ですが、通常ですと2ヶ月前後の過程が、この環境下では大幅な遅延をきたしても、「叱咤激励し」この遅れを取り戻すことが出来ないのです。 既に一部のCECファンの方はご存知のように、当社のベルトドライブCDトランスポートとCDプレーヤーは、流通でも在庫がわずかとなっております。当社では、まずTL51、TL51Zの新たなバージョンをTL51X、TL51XZとして、当初7月にはご提案させていただく予定でした。設計部門を全て東莞市においている当社は、上記のSARS禍の影響をもろに受けてしまいました。誠に残念ながら、2ヶ月間の発表の遅れとなってしまいます。状況をお汲み取りの上、どうか今しばらくご猶予をいただきたいと思います。 さて、この東莞から成田空港に戻ってみますと、とんだ報道陣のラッシュに遭遇しました。地雷を持ち帰ろうとした毎日新聞社・報道カメラマンのシリアからの帰国と偶然時刻があってしまいました。翌朝の新聞報道は、当の毎日新聞を含め、大体がこの報道記者のうかつさ、危機に対する認識の甘さを指摘するものが多かったようです。しかしこれは同業者に対するかばい立て以外の何者でもないように感じられます。報道者が戦場に赴く場合、そこは、人が人を殺しあっている殺伐たるケイオスであることは十分忠告され、自己防衛に万全を期すようにとも教えられているでしょうし、自分でもそう認識していたことと思われます。 報道写真には、感情移入を意図的にしなくとも、カメラマン本人の被写体との係り方が撮られた「絵」の中に自然に表現されます。この当該カメラマンの撮った写真を特定することはできませんが、彼の「作品」の中にそのことは表現されているはずです。しかし、少なくとも戦地の悲惨さを目の当たりにしながら、殺傷の道具である武器を、当人がそれと知りながら、「記念に」持ち帰ろうとする意識とはいかなるものでしょうか。殺傷能力がないものと誤認したことは事実でしょう。それ故に恩赦を受けたのでしょうから。しかし殺傷能力が残存しているかいないかを問わず、それを『記念に』するノウテンキさは、平和な日本から地獄に「観光旅行」に来た意識に他なりません。無事に帰れることが決まった瞬間に、この地獄とわれわれが日本で享受できている天国とが同一線上に隣り合っている事実を忘却してしまったのでしょう。なんともやるせない想いで成田空港を後にしました。 その2日後、ニューヨークJFK空港に到着。小雨が降る摂氏18℃の寒さに、ちょっと身震いするほどでした。ホテルにチェックインしたのが日曜日(22日)午後9時を回っていましたでしょうか。運良く、部屋のテレビでNYヤンキースと、NYメッツの試合の後半部分を楽しめました。その日、松井選手は、同点となる自己7号ホームランを打った後、一挙にヒーロとなれる場面を迎えていました。1アウト満塁、それも前の4番バッターが敬遠された場面です。残念ながら内野ゴロでのダブルプレーでチャンスはついえました。しかしこの寒さの中で、ホームランを打ち、完全にレギュラーメンバーとして欠かせない存在となっている堂々たる雰囲気でした。今年のニューヨークは例年になく雪が多く、この22日まで暑い日が皆無であったとのタクシードライバーの話でしたから、月曜日以降ニューヨークだけでなく全米的に真夏に向かうとの天気予報に、いつも夏場に強かった松井選手の今後のV字型カーブを描いた活躍を予感したものでした。 先の6月20日には、当社で輸入販売をいたしております、Vienna Acoustics の純アルミ素材を用いた、マルチチャンネル対応を考慮した新型スピーカーを3モデル、報道関係、評論家の皆様にご紹介させていただきました。今後、CECでは次々に新たな提案を行ってまいります。勿論、ベルトドライブの高級機も、TL51X、TL51XZに続いて開発準備に入っております。暑い夏に劣らない、「熱いCEC」で邁進するつもりです。これからの猛暑に、どうか「熱いCEC」の奏でるクールな音楽で乗り越えていってください。 |