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第20回 2002/5/31

FIFA2002ワールドカップがもう間もなく開催という時期になってきました。(この原稿は5月27日に書いています)このワールドカップに関連して、この間 何と言っても一躍有名になったのが、大分県中津江村。カメルーンの選手団一行の到着が遅れた4日間、ありとあらゆる報道で、この村が必ず大きく取り扱われました。商業的に見た「宣伝効果」は金額的に恐らく10億ではきかない金額に上るものと推測されています。

実は、小生、大分県出身。幼稚園から高校を卒業するまで17年間大分県に在住しましたが、恥ずかしながらこの村の名前を聞いたことがありません。あらためて「大分県 中津江村」で検索しますと、地元の商工会の作成した立派なホームページがあり、何と英語へのシフトも可能になっています。まさに時代はインターネットを必須としているのだなという感を新たにしました。

さて、仕事柄海外に出掛けることも少なくない立場上、こうした国際的なイベントを前にしますといつも気になることがあります。よく言われる、「国際親善」についてです。まず第1に、こうした国際的な大きな催し物の開催国に選ばれますと、国威の発揚を促進するためか、「国の恥じ」となるようなことは慎むような個々人のモラルの向上が要求され、若しくはそれを改めることが国策上も、公共投資上でも無条件で容認される雰囲気が作られることです。

今回の「催し物」は、国際的なサッカーの覇者を競う最も重要であるとされる戦いであって、参加できた各国は、各地域での予選を勝ち抜き、これから本戦に望むわけです。こうしたチームは、日本を知るために観光旅行に大金を支払っているわけではありません。したがって、参加選手、関係者のチームも、例え日本人の感情を逆なでするようなことがあったとしても、それが公共的なモラルに反しない限り目くじらを立てるべきではなく、彼らが勝つことを目標として来日しているという目的を理解すべきです。戦いに来ている、恐らく気分的にも緊張している当事者との間で、安易な「親善関係」の樹立をもくろむことは、不謹慎でもあると思えます。なるべくそっと選手団を見守ることのほうが、よほど親切であることでしょう。

また、この「催し物」に投じられる公共投資の規模と金額については、これほど「構造改革」と「財政の再建」を主唱している現政府も、まったくのフリーパスであり続けていることは、なんとも理解に苦しむところです。公共事業の見直しの対象に、新設競技場がカウントされたことはありません。こうした傾向は、東京オリンピックを見習ったといわれる1988年のソウルオリンピック以来、日本よりも韓国でその傾向が強く見られることは、残念でもあります。

他方で、あまり外国の人々と接触の少ない日本人は、日本人以外の他国籍の人々を、あまりにも『異なる存在』であるように意識しすぎる傾向を時々見聞きします。同じ人間であるというベースにたった上で初めて違いがわかるのですから、 最初から自分達との違いにばかり気を回していたのでは、見るものも見えなくなってしまいそうです。自然に同じ人間として接触、対応する平常心が求められてもいるのではないでしょうか。歌詞の意味はわからなくても、英語、フランス語、その他の言語で語られる幾多の名曲が、どれほど我々の心を魅了してくれたことでしょうか。

和楽にはなかった旋律とリズムで表現される、クラシック音楽が、明治の開闢後、ただちに広く、深く私たちの先輩達の心に浸透していったのは、音楽という芸術をとおして、人間であることの普遍性に訴えることができたからです。

設備や施設が、120%のできでなくても、試合の内容が、人々を喚起させ、感動させることができつづければ、この国際的な催し物は成功です。たとえ主催国である両国が1次予選に敗退したとしても、そうした環境を作ることができたことをお互いに誇りに思うべきではないでしょうか。