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第21回 2002/7/15

執筆者の手違いで原稿発送が不能となり、7月のメルマガの発信が遅れましたこと深くお詫び申し上げます。実は、6月末にスペイン、マヨルカ島にて、欧州の今下半期の販売の打合せにでかけました。途中で、うっかり電源供給コンバータを忘れたことに気づきましたが、現地調達で何とか対応できるものと考えたのが大間違い。島の最大の都市パルマ・デ・マヨルカ(人口約30万人)のどのパソコン店にもノートブックPCを販売しているところがなく、そもそもパソコンそのものの販売店が極端に少ないことに対する無知のため、帰国まで手の打ちようがなかったのが実情です。

家電製品の貿易業務、若しくは電気製品の外国人向け販売に携わっていられる方であれば常識であり、また、一度でも国外に電気製品をもってお出かけになられたことがある方ならどなたでもお判りのことですが、そうでない方には是非知っておいていただきたいことがあります。それは、世界各国の電源、周波数が必ずしも同じではないどころか大きく異なっており、更に電源コンセント、コードの形状、仕様までもが異なっていることです。

日本国内は、一様に家庭への供給電源は100Vで統一されております。しかし、所謂「静岡・糸魚川ライン」(地学的にフォッサマグナといわれる大断層線)にほぼ添って、東側は50サイクルであり、西側は60サイクルと今もって別れております。東京は50サイクルですが、大阪は60サイクルなのです。現在の国内のオーディオ機器を含む家庭電器製品は殆ど供給されるAC電源を、製品内部でDC転換しておりますので、こうした周波数の違いが、実際使用上問題となることはありません。しかし、例えば当社の場合、1970年代半ばまでの全てのフォノモーター、及びレコードプレーヤーは、DC対応ではなく、モーター駆動がAC対応でしたので、モーターに取り付けるプーリーの交換が、この両サイクルをまたがるときに必要でした。

つまり東京で使用していたレコードプレーヤーを、大阪で使用するときには5:6の比率で回転が変わりますので、1分間に1/11回転の偏差が発生します。それを補正する道具としてのプーリーが必要であったわけです。(単純に直径を変えればよいだけではありましたが)つまり周波数が異なるということは、何もしなければ、オーディオ、レコードプレーヤーの場合には、音楽が遅くなったり、早くなったりする、また、所謂「電機釜」では、ご飯がこげたり、十分炊けていなかったりの現象があったわけです。

さて、同一電源であっても周波数が異なりますとこういう問題があったのですが、国際的に電源が異なりますとそれどころの騒ぎではありません。欧州は、現在230Vと統一されております。日本の電気製品(100V)をそのまま欧州にもっていきますと、入力過多でまずヒューズは飛びますし、ヒューズがない製品では加熱による、最悪出火も危惧されます。逆に欧州で使用していた製品は、日本では入力不足により駆動できません。

他方、アメリカ合衆国とカナダは、120Vが標準です。また、使用する電源プラグも各国異なっています。同一のルールに則って平等に技と体力を競うことのできるスポーツと異なり、電気の世界では、世界共通のベースを作ろうという機運すら見られません。全世界が、同一の電源、周波数で統一できれば、所謂『無駄』の極めつけの合理化ができることは間違いないのですが。

世界の電源プラグは、 http://homepage1.nifty.com/spur2000/doc/trip/power.htm

世界的に製品を持ち運びされることが予め充分予想される製品には、スイッチング電源方式が採用され始めております。例えば、今回私が持込を忘れたような、ノートブックPCのAC・DC転換コンバーター等は、入力電源が何ボルトであろうと問題なく対応できるようになっております。また、昨今開発されているDVDプレーヤーも、次第にスイッチング電源対応となりつつあるようです。ただこれとて、電源プラグの形状には対応できませんので、出掛けていく先の電源コンセントの形状に合ったアダプターを持参することが必要ではあります。(ホーム-オーディオとしてのCDプレーヤーにスイッチング電源を採用することに当社は躊躇しております。音質上の保証がいまだ確認できないのです。)

全世界に共通な電源、電源プラグ、電源コードをもつことは、当初は膨大な費用と時間を要することでもあり、私達が生きているうちの実現は到底不可能かもしれません。しかし人と物の交流を一国にとどめることができなくなった20世紀から、既に100年を経て、21世紀に入っているのですから、単に家庭での個人的な電気製品の使用の利便さという観点以上に、国家間をまたぐ電力プログラムを作成する上でも、この「標準化」は、全世界首脳会談「サミット」のテーブルにいつかは俎上に載せるべき議題であると信じてやみません。