第003回 2005/12/18 |
ビートルズとビートルズ世代─40年の軌跡 |
英パーロフォン PMC 7009 (1966 EMI RECORDS LTD.) タックスマン/エリナー・リグビー/アイム・オンリー・スリーピング/ラヴ・ユー・トゥ/ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア/イエロー・サブマリン/ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ/トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ (発売:1966年8月 録音場所:EMIスタジオ) |
今から40年ほど前、ちょうど筆者がニューヨークに赴任したころ、世界中は“ビートルズ旋風”の真只中だった。当時のビートルズ関連の年譜を列記してみよう。
1965年後半、ビートルズのコンサート活動はピークを迎えていた。そして、ビートルズに対するあの叙勲である。推薦者は、時の首相ハロルド・ウィルソン、主な理由は「外貨獲得の功績」だった。 叙勲以来、長期休暇をとっていたこともあり、彼ら4人の創作意欲も大いに充実していたし、この録音では、作詩・作曲分野だけではなく、レコーデイング上のテクニックや各種楽器の使用などを含め、新たな実験を行っている。ポールは、弦楽との共演で「エリナー・リグビー」や美しいバラード風の名曲「ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア」を、ジョージも、インド音楽を取り入れて「ラヴ・ユー・トゥ」やブラスを導入した「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」など3曲を収録する。ビートルズにとって新しいサウンドを目指した意欲的かつ革新的アルバムで、彼らのベスト・アルバムの1つともなった。このアルバムを完成後ビートルズは、日本を含めたアジア、及びビートルズにとって最後のコンサートとなるアメリカのツアーに出掛けるのである。 このアルバム収録曲「アイム・オンリー・スリーピング」からの一節を下記に掲載するが、何とも象徴的である。 当時の彼らの偽らざる心境であろうが、40年前のちょうどこの詩がつくられたころ 我々は企業戦士として猛烈に働いていた。その効果もあったのか、一時的には確かに物質的に豊かにはなったかもれないが、飽くことなき経済的利益追求の結果、90年代に入るやバブルは脆くも崩壊、今だにその後遺症に苦しんでいるのが実体であろう。 そして40年前、10代後半をビートルズに夢中になった世代、いわゆるビートルズ世代は、戦後のベイビー・ブームによる団塊の世代ともオーヴァーラップするのだが、ここ数年、彼らも大挙していよいよ定年を迎えることになる。 ジャケットは、ビートルズのハンブルグ時代からの友人クラウス・フォアマンによるもので、モノクロながら自ら描いたイラスト上に写真がコラージュされる。大変優れたデザインで、この年のグラミー賞のジャケット部門の受賞作品。 |