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第95回 2008/09/01
2008年北京オリンピックを終えて

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北京オリンピック公式ポスター

 8月24日(日)、17日間に及んだ北京オリンピックが閉会しました。閉会式の模様をTVで見ることが出来ました。この2週間以上に及ぶ、世界的な運動競技の祭典を、皆さんはどのようにご覧になられたでしょうか。

東南アジアで開催された北京オリンピックは、1964年東京、1988年ソウルについで、20年ぶり三度目のアジアオリンピックでした。1964年の東京、1988年のソウルは、わが国日本と、韓国のそれぞれ躍進しようとする国家の産業とそれに裏付けられた経済の盛況をより一層鼓舞するための、国威発揚の壮大なセレモニーでありました。 事実そのような観点から見た場合、獲得されたメダル数を含め、過去にこのアジアでのオリンピックは、その主催国の開催目的を十分に果たしたといえます。今回の北京。 メダル獲得数では、常に世界の主役であったアメリカ合衆国、そして大国ロシアをも抜き去り、金メダル数において、世界一位の地位(総メダル数はアメリカに次いで世界二位)を獲得しました。何であれ競技は、上位であるほどその競技にたいするより大きな賞賛が与えられることは言うまでもありません。運動競技全般にわたって世界一位の地位を最も多く獲得したのですから、開催国、中国の面目躍如であったことはいうまでもありません。

 当初、それほどの関心を示さなかったと報道された中国の一般市民も、日を追うごとに大々的に賞賛されるゴールドメダルの報道に、次第に熱気を帯び始めたようです。 オリンピックも後半に差し掛かり、ゴールドメダル間違いなしといわれた、陸上競技選手(110メートル障害、劉翔選手)のレース棄権への異常な全中国的な反発、ブーイングは、既に北京オリンピックが中国の一般大衆の心を完全に捉えた証左のようにも思えました。中国政府首脳の名前が、ゴールドメダリスト発表ごとに、次第に色濃くオーバーラップされて行く様は、恐らく中国首脳が、この北京オリンピックの経過とともに、中国国民の気持ちを掌握したという確信の深まりの表現だったようです。

 8月24日閉会式に望んだ、北京オリンピック開催責任者の、閉会宣言は、そのことを如実に表していました。彼は、競技で成功を収めた選手や、参加した選手そして観戦した観客を含め競技の円滑な推進に協力した人々、世界オリンピック委員会や各競技団体とその役員、そうした全ての人々に感謝する以前に、まず第一に中国最高政治責任者の名前を挙げ、賞賛することで「大成功の北京オリンピック」を締めくくりました。その意味で、これほど政治色の強いオリンピックは第二次世界戦争以後なかったといっても良いのではないでしょうか。第二次世界戦争直前の、国家管理の行き届いたとされる1936年ベルリン・オリンピックを想起させる不気味さを時として感じたのは私だけでしょうか。何はともあれ、アジアで三度目のオリンピックは、それ以前の東京、ソウルをはるかに凌ぐ、当事者にとって、大成功を挙げたことは間違いありません。

 さて閉会式。驚くほど多数の鍛錬された人々の、それも色鮮やかなパーフォーマンスは、恐らく競技場にいたオリンピック競技者を含めた参加者全てと、TV前の全世界の観衆を魅了するに十分でした。そして何よりもこれまで、あくまでもセレモニーを鼓舞するための道具でしかなかった音楽効果を、これほどまでに前面に打ち出した閉会式を知りません。レッド・ツェッペリンのギターリスト、ジミー・ペイジとレオナの共演は、ポップスとロックファンにとどまらず全世界の若い人々を魅了しました。更にスペイン出身の世界的なテノール歌手プラシド・ドミンゴが、中国での国家的式典では欠くことのできない女性歌手、宋祖英と、それも北京語で中国歌曲を見事に歌い上げたのには、まったく感心する以外にありませんでした。

 四年前のアテネオリンピックは、国家の壁を越えて、選手個々の競技上の優劣が全面に出てこようとしたものでした。(2004年9月1日付け、「独り言」第47回をご参照ください) そこで次回に期待したのは、より個の特性の発現が自由になされる世界的スポーツ競技大会というものでした。残念ながら、今回の北京オリンピックは政治性を全面的に出した競技会でしたし、更にそのことに全世界の報道機関があまり関心を払わない(ごく一部を除いて)、むしろ賞賛さえする傾向が強かったのは、残念に思われてなりません。ただ、閉会式で、オリンピック史上初めて、音楽を単なるセレモニーの添え物ではなく、音楽自体として聴衆に大々的に提示した企画には、無条件で拍手を送りたいと思います。






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