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第130回 2011/08/02

「涼しい夏の盛り」

 先の7月29日、新潟県と福島県を中心に、記録的な豪雨が襲い、実に18万人を超す人々に対して避難勧告が出されました。この集中豪雨に見舞われた地域の皆様方には、心からお見舞い申し上げます。関東地方は、まるで戻り梅雨のように、連日雨雲が空を覆い、夕刻から深夜にかけて、雷雨が鋭い雷鳴とともに分散的に各地で観測される、非常に不安定な気象状態のまま8月に入りました。8月初旬と言えば、本来夏真っ盛りで、暑さの極まる頃ですが、今年は涼しい8月の入りとなりました。

 先月下旬から今日に至るまで、牛肉の放射性セシウム汚染が、原発のある福島県だけでなく、日本各地で発見され新聞紙上でも、テレビでも大きく取り上げられました。昨日は、岩手県産の肉牛の出荷規制が報じられています。大手新聞も、NKHも、その原因として、牛に餌として与えられた稲わらが、福島第一原子力発電所の事故により高濃度の放射性セシウムに汚染されていたことだとし(昨年秋に刈り取られ巻き上げられた稲わらが、異常気象により田に放置され、汚染された空気と雨水に晒され続けた)、稲わらの供給元を画面や紙面で取り上げていました。同時に、牧草への注意は喚起したものの、稲わらへの指名的な汚染注意の指導が十分ではなかったと、監督責任のある関係行政体、農水省を指弾していました。osen

 牛肉汚染の原因とされた稲わらの報道は、宮城県北部の農家の稲わらから、国の許容量の約27倍にも上るセシウムが検出されたことから端を発しています。県外移出されたこの稲わらを与えられた肉牛の範囲が報道もされました。その後岩手県の稲わらからも、宮城県と同じレベルのセシウムが発見されたと報道されました。

 7月中旬以降の連日の報道から、肉牛の餌の80%強が(ほぼ100%輸入に依存するトウモロコシなどの)濃厚飼料で、残りが牧草や稲わらのような粗飼料だということが分かっています。輸入に頼る濃厚飼料が問題ないという前提では、粗飼料全てをあらためて疑う必要がありそうです。つまり、農水省が当初から注意を喚起していた牧草の問題にまで戻る必要がありそうです。右は河北新報社の掲載した肉牛汚染の地図です。

 他方で、乳牛では、与える餌の濃厚飼料と粗飼料の割合が半々だといわれています。そうだとすると、問題は深刻で、肉牛以上に粗飼料を与えられている乳牛の方が放射能汚染の危険性は高くなります。当初、農水省の検査では、牧草の汚染は安全値を越えていないとの説明が報道されました。ことここに至ると、現在でもそうなのかと疑問視せざるを得ません。肉牛の放射能汚染を、稲わらを犯人に絞ることで、実は汚染の危険性は乳牛にも及んでいる可能性がある事をわきに追いやっているようにも思えるのです(実は、ある農家の方のツイッター形式のブログでは、農耕地に放置され、雨水に晒された稲わらなどは、牛は食べず、家畜の餌として与える稲わらはかなり乾燥管理が徹底しているとのコメントもあります)。

 あまり注目されませんでしたが、月末には、沖縄のホームセンターで販売された腐葉土からセシウムが検出されたという報道もされています。7月末現在、放射能汚染の現象は、直接的な被害として福島県を中心として、北は岩手県(肉牛)から南は静岡県(茶)までが、分散的に食料汚染として報道されています。

 政府が長く報道規制を行ってきた、我が国気象庁の「放射性物質拡散予測」データーは、「IAEAから資料提出の要請終了の連絡がありましたので、5月23日要請分を最後に資料作成は終了しました」として、現在は公表されていません。膨大な国家資産(100億円といわれています)を投じて作られた「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」SPDEDIは、外国の圧力でいったん4月初旬には国内でも公表されました。「原発の絶対安全神話」が崩れ去り、かの大震災から5カ月になろうとしている現在、日々新しい被害の現象が報じられています。いまこそ、放射能が過去どのように拡散していったのかという理論的なデーターと今現在の影響予測が、この地に住む人々にとって必要です。何故その情報を開示しないのか理解に苦しむところです。

 匂いも色もない放射性物質で、食物連鎖の底辺にある植物が汚染され、水が汚染され土壌が汚染されます。こともあろうに、汚染されたわらや、牧草は農耕地にすきこむことが指導されています。土壌汚染の悪化を繰り返します。汚染牛の犯人は稲わらだとしても、発見された汚染稲わらの処分方法は、未だに「指導」されていません。また、牛肉だけにとどまる問題なのか、畜産だけにとどまる問題なのか、今のままでは疑問が、疑惑となって不安感を増大させます。

 政権政党の主座を占める個人を挿げ替えても、放射能汚染の実態を国民に知らせないからではなく、放射能汚染を含む大震災の被害からの復旧に迅速に対応できなかったからだと説明されることでしょう。津波と地震の被害は、誰の目にも明らかで、日を追うに従ってその詳細が判明されていくことでしょう。しかし、放射能汚染は、汚染された結果が食料に現れてきた現象だけが部分的に報道されるだけで、過去と現状の汚染の実態が、その経緯を含めて何も明らかにされていないのです。見えない恐怖を、科学的な知能で分析、推測する必要があるからこそ導入した最先端装置がSPEEDIだったはずです。SPEEDI のデーターを公開すること、政権の為政者に、それを求めることは無理なのでしょうか。涼しく始まった8月ですが、心寒い思いのする3.11東日本大震災の現在の結末です。

 

 

 

 

 




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