第001回 2005/12/01 |
「日本のうた 心のうた─あの日、あの頃」 |
日本ビクター KVX-5021 椰子の実/宵待草/初恋/中国地方の子守唄/平城山 |
この新連載で最初に取り上げるのは、日本ビクターが昭和53年(1978)に発売した「日本のうた 心のうた─あの日、あの頃」シリーズ、全8巻中の第1巻。タイトルは「椰子の実」で、「日本の歌曲 ベスト15」の副題が付いている。 文字通り、日本の代表的歌曲が収録されており、滝廉太郎による「花」「箱根八里」「荒城の月」の3曲、山田耕筰が、「この道」「からたちの花」(作詩はいずれも北原白秋)と「中国地方の子守唄」の3曲、以下、藤村の作詩に大中寅二作曲「椰子の実」、野口雨情−中山晋平コンビによる「波浮の港」、白秋の詩に梁田貞作曲の「城が島の雨」、竹久夢二の「宵待草」(作曲:多忠亮)と啄木の「初恋」(作曲:越谷達之助)、「浜辺の歌」(林古渓−成田為三)、「平城山」(北見志保子−平井康三郎)と続き、戦後の作品では、いずれも江間章子作詩による「夏の思い出」(作曲:中田喜直)と「花のまち」(作曲:団伊玖麿)が選ばれて計15曲となる。 原田泰治によるジャケット画は、水芭蕉の風景である。筆者は、今年5月、尾瀬に匹敵するといわれる北信濃の鬼無里の水芭蕉を見に行った。未だ雪の残る戸隠連峰を借景に、ブナ原生林の間に点在する広大な水芭蕉の群生地を森林浴しながら、この「夏の思い出」の世界を心ゆくまで満喫することができた。信州出身の画家、原田にとっても、この鬼無里の光景は、その記憶の1つになっているのではあるまいか。 |