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■CECとフローティングシステムの歴史
CECは、1954年にアナログレコードプレーヤー(当初は、トーンアームのないフォノモーター)のメーカーとして、オーディオ界での歴史をスタートさせました。日本の第1次オーディオブームが始まったのは1970年代初頭です。当時、既にフォノモーターとトーンアームをそれぞれ独自に調達し、自作したキャビネット(多くの場合は木製)に組み込む段階から、メーカーがフォノモーター部とトーンアーム部をキャビネットに組み込んだ状態で販売する方法が主流となっていました。金属製シャーシにモーター、センターシャフト、トーンアームを取り付け、 そのシャーシをキャビネットに組み込む方式が一般的でした。国内の多くのメーカーは、外部からの振動を制御する方法として、シャーシ部分とキャビネット部分を重くし、両者の接合度を強くする方向を選択していました。その後、極端な場合、100kgを超す質量を持つレコードプレーヤーさえ話題となった時代です。CECでは、1972年から、比較的廉価なレコードプレーヤーを欧州に販売することを企画していました。ところが、当時国内で大好評を得ていた最もポピュラーなモデルBD3000が、ハウリングに弱いという弱点を指摘され、交渉がとん挫してしまいました。当時流行であった二段重ねのキャビネットに、シャーシを直接取り付け、強く結合させる方式を見直さざるを得なかったのです。キャビネットの構造を、「はかま状」の二段構造から、最もシンプルな「単純箱型」に変更し、キャビネットの四隅にザクリをいれ、そこにスプリングと緩衝材を組み合わせたショックアブソーバーを置き,その上にシャーシを装着するフローティング方式を採用して、問題の解決を図りました。単独のレコードプレーヤーとしては、国内で初めてシャーシをキャビネットからフローティングする構造を採用、国内向けモデルと区別するためBD2000として輸出を開始しました。幸い、ドイツを中心として欧州では大変な好評を博すことができました。1970年代を通して、第1次オーディオブームの終焉まで、CECはこのフローティングシステムを採用した廉価版レコードプレーヤーで欧州オーディオ界をリードできました。不思議なことに、この方式を追随するメーカーはついに現れることはありませんでした。現在、CDトランスポートの最高峰を自負しております、TL0シリーズ(最新モデルはTL0X)には、フローティングシステムとしてはこれまでの経験の全てが結実しております。当社のフローティングシステムは、基本的にはバネと緩衝材の組み合わせで、メカニズム全体の共振ポイントを調整し、外部振動の制御を図るという考えに基づいています。ひとつひとつのサスペンションは上下振動の制御に、合計三つのサスペンションの組合せで左右振動の制御としても機能しているのが、TL0Xの振動制御のサスペンションの基本構造となっております(詳細は、当社ホームページ製品欄のTL0Xをご参照ください)。今回、吊り構造を採用したジークレフ音響株式会社のWELLFLOAT音響ボードは、基本的な理念として、重量による振動の抑え込みではなく、フローティングによる振り子動作で振動を制御(より正確には「開放」)するという点で、これまでのCECの長年の設計思想と実によく共感するものです。CECでは、音響機器そのものは製造いたしますが、それを支えるボードやキャビネットを手掛けたことはありません。CECのこれまでの理念と共通する技術的思想のもとで、考案、設計、製造されたWELLFLOAT音響ボードを、CEC製品としてご紹介していきたいと考えるに至ったのです。 ■アコーステックスピーカーボードの基本的な考え方 振動を制御するために、フローティング構造を採用する。この考えは、音響電気製品では、CECに限らず、一部の海外ハイエンドメーカーも採用してきました。今回ご紹介するスピーカーボード、ASB3545WFとASB4560WFの2モデルに採用されたフローティング構造は、ジークレフ音響(株)開発のWELLFLOAT方式を採用、振り子運動の原理による全くこれまでにはなかった独自のものです(特許出願中)。音響的な効果のほどは、このスピーカーボードの上にのせて聴く場合と、それを使わない場合の違いですぐにおわかりいただけます。音楽表現に、繊細さが加わるだけでなく、音楽の全体像がより広く開放的になります。ここでは、振動から開放された音響機器が、より開放された音楽を再生することが可能となったと言えます。この違いを数値で表現するすべを今のところ私どもは持ち合わせません。オーディオ製品は、レコードプレーヤーはその最たるものですが、スピーカーに限らず振動から自由であることが必要です。振動を制御するために、製品自体や、製品を置くボードの質量を増加させる方法は有効ではありますが、限度があります。長く国内のオーディオ業界では、理由はよく分かりませんが、フローティング方式を一顧だにしない傾向がありました。しかし、神戸の大震災以降、新たな工業建築の基礎工事に、さまざまな方法のフローテイング方式が採用されていることは、耐震構造の有効な手段として、フローティング方式が建築業界でも認められてきたといえます。東日本大震災をつい先日経験したいまこそ、耐震構造の見直しを考えるときにあるといえます。ひたすら重量で振動を抑え込むのではなく、フローティングによって振動を開放する方向へ、まさに転換のときではないでしょうか。 ■主な特徴と仕様 ●振り子動作で振動を吸収するWELLFLOAT採用。 ●ボードの傾きを補正する可変バネレート機能。 ●質量5kg〜90kgのスピーカーに対応。 |
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※WELLFLOATは、ジークレフ音響(株)の登録商標です。 |