第72回 2006/10/01 |
紅葉の始まる季節に |
日中は汗ばむような日があっても、朝夕の涼しさと、どことなく冷やりとする風にくすぐられますと、本格的な秋の到来を感じます。そろそろカモに代表される冬鳥が越冬のために戻ってくるでしょうし、近所の公園を一面緑に覆っていた木々も次第に紅葉を開始し始める季節です。この夏の蒸し暑さに暑気あたりされていた方も、そろそろ回復される頃ではないでしょうか。 最近、著名な森林生態学者、四手井綱英(しでい・つなひで)氏の、おそらく最後の著書となったエッセイ仕立ての、「森林はモリやハヤシではないー私の森林論」(ナカニシヤ出版)を読んでいまして、確かに多くの方が錯覚しているのではないかと思い当たる箇所がありましたので、落ち葉に因んで取り上げてみましょう。 秋の深まりとともに、落葉樹は、葉の色を赤や黄色に染め、落葉します。これにはケヤキ、ブナなどに代表される落葉広葉樹とカラマツやメタセコイヤに代表される落葉針葉樹があります。話はちょっとそれますが、街路樹として多くの都市部で植林されるイチョウ(公孫樹)は、葉が扇状に開いていることから広葉樹と考えられがちですが、針葉樹として扱われます。葉の個々の形状ではなく、葉をつけた木全体の形状からそのように分類されたものではないでしょうか。 こうした落葉樹は秋から初冬にかけてその葉をすべて散らしてしまいます。当社の近所の公園でも、この時期になりますと市当局から依頼を受けたと思われる係員の方々が散在した枯葉の処理をかなりの頻度で行っています。これに対して、常緑樹は、秋から冬にかけても緑の葉を枯らすことなく緑の木であり続けます。花を咲かせた椿の輝く葉に雪が積もっている写真などは皆さん何度か目にされたことでしょう。 問題はここからで、落葉樹の路上に落ちた葉の処理を合理化するために、街路樹を落葉樹から常緑樹に替えようとする行政組織があったことを四手井氏は愚かなことと、先の著作の中で指摘しています。そのような実例を私は目にしておりませんが、おそらく常緑樹は一年中緑を絶やしませんので、落葉がないと考える地方行政組織があったのでしょう。 落葉樹と同様、常緑樹も春先に新しい葉を出します。落葉樹ではまったく裸の枝先から発芽し、次第に葉が大きくなり同時に緑を増していく様子がつぶさに覗えるのですが、常緑樹のこの作業は、従来からの葉に隠れて目立つことはありません。この段階で、常緑樹は、古い緑の葉を次第に落としながら新しい葉と交代させていきます。常緑樹は、落葉の季節が春であり、落ちる葉の色が緑であることから、いわゆる赤や黄色の落葉といったイメージからまったく外れているだけで、樹木総体の落葉量は、落葉樹と変わることがないのです。従って、落ち葉の処理がもし必要であるとすれば、落葉樹も常緑樹も、作業する季節が違うだけで同じことだといえるのです。落ち葉についてのイメージ、少し変わりましたでしょうか。 さて10月1日は「国際音楽の日」です。これは、国際音楽評議会の提唱を受け、1977年に制定されたものです。わが国では、これに従って、「音楽文化の振興のための学習環境の整備等に関する法律」が1994年(平成6年)公布、施行されました。残念ながら、「国及び地方公共団体は、国際音楽の日の趣旨の普及に努めるものとする」とされた項目は、必ずしも日の目を見ているとはいいがたいようです。 2002年に10月1日に文化庁主宰で、国際音楽の日・記念コンサートが東京オペラシティコンサートホールで、第57回文化庁芸術祭として開催されましたが、それ以降の動向は定かではありません。どうもそれ以降文化庁芸術祭は、音楽の日とは袂を別ったようですが、自分たちを縛る法令を作ったのですから、別の形での継続に尽力してほしかったものです。国際的な、文化のにおいのする動向には法令で追随はしましたが、実施の方はというと若干お寒い限りという印象をぬぐいえません。どうもお役所の文化活動は継続性に欠ける嫌いがあるようです。 本年度よりCECは、東京インターナショナルオーディオショウに参加することになりました。私はこれも、民間の任意団体によるひとつの音楽文化活動の一環だと理解しております。CECのアンプ、CDプレーヤーの新製品と、最近発売開始しましたウィーンアコーステック社の新製品を、じっくりお聴きいただけたらと願っております。関東地方にご在住の方には、是非おいでください。10月20日(木)から22日(日)の3日間、東京フォーラムでの開催です。当社としては初めての参加で、何かと行き届かない点も散見されるかと存じますが、なにとぞ新製品の音質に免じてご容赦ください。また、関東地方以外にお住まいの方には、オーディオショウ完了後にその報告をさせていただきたいと存じております。 |