第135回 2012/1/10 |
「壬辰2012年新春を迎えて」 |
辰年2012年となりました。皆様明けましておめでとうございます。昨年は、歴史的な不幸、東日本大震災に見舞われた皆様も、大変なご苦労のうちに新年を迎えられたことと存じます。本年は、天にも昇るといわれる辰の年。何とか、震災の復興に、生活の再建に、この年の持つ運が強く味方してくれることを切に祈りながら迎えた新年であったことと存じます。 昨日(1月10日)のNHKをはじめ、本日の大手新聞社は、米国ラスベガスで開催中のCES(国際家電ショー)の様子を報道しています。そこでは、次世代テレビの開発がこのショーの中心となっていること、国内電機メーカー各社の対応に対して、韓国家電大手二社(サムスン電子とLGエレクトロニクス)の大型画面(55型)有機ELテレビの発表が現地の注目をより集めていることが、なかば日本の遅れという危機感を煽るかのように報じられています。 テレビの「アナログ波地上放送を、2011年7月をもって全面デジタル化への切り替える」という政府方針決定にしたがい、2009年末から2010年、そして2011年前半にかけての国内でのデジタル受信機能搭載のテレビの売り上げは、右肩上がりとなりました。家電メーカー各社にとってテレビの増産は、最大の課題でもありました。この間、政府の景気浮揚策としての家電エコポイント制度が販売金額の増加を後押ししました。 そして夏場を過ぎて、加熱したテレビ販売も踊り場を迎えました。その結果として、家電大手メーカー各社の内証はつぶさには分かりませんが、公開されている情報では、お互いの価格競争による単価の右肩下がりで、事業としては不採算化し、また経営全体としても赤字化に陥ったメーカーも数社あることが報じられています(テレビ事業からの撤退、人員整理などなど)。 この間、国内では問題視されることもありませんでしたが、米国でのテレビ販売は、韓国製のテレビが進撃を続け、一挙に市場シェアは韓国ブランドへと流れはじめていました。米国市場調査会社NPDの発表で、昨年(2011年)の第三四半期(7〜9月)、日本国内のテレビ販売が踊り場にさしかかった時期、米国家電市場初めて、韓国ブランドのテレビの販売シェアー(金額ベース)が50%となったのです(サムスン37%、LG13%)。注目すべきなのは、この時期の韓国ブランドテレビの販売数量ベースでのシェアーは36%なのです。つまり、韓国製品(より正確には、韓国ブランド製品)は、高価格製品で米国テレビ市場を席巻してきたということです。一般には、対米ドル、ウォン安が韓国製テレビ販売の上昇を下支えしたと論評されますが、低価格化だけでは、この数量ベースより金額ベースでの占有率が高いことを説明できません。(また、韓国国内で生産されたかどうかも不明です。) 米国の一般消費者市場が非常に価格に対して敏感であることは、誰もが知るところです。また、市場規模としては依然として世界最大であることも。米国の家電大手量販店にならぶ、日本ブランドの大画面のテレビの販売価格は、常に日本での販売価格を下回っているのが常識でした。長期的に対米ドルの為替レートで異常とも思える円高が継続している中、日本製ではない、日本ブランド製品が販売されてきたと見るべきです。当然韓国製テレビもその価格競争の厳しさの中で生き残ってきたのです。韓国製テレビのシェアー50%という事実は、円、ウォンの対米ドル為替レートによる要因ではなく、販売戦略にあったと見るべきではないでしょうか。 今回のCESでの、韓国メーカー二社の発表した、大型画面有機ELテレビの背景には、昨年度の数値に表れた、高付加価値化を志向してきた基本的な販売戦略の一つの結果だと見ることができます。この有機ELテレビを初めて販売したのは、SONY(2007年)。そして今回のCESでの大型有機ELテレビの発表がなされる直前に、同社は有機ELテレビの生産を完全に終了したことが報じられました(読売新聞:国内での発売中止は2010年。欧米向け生産は継続していた)。 有機ELテレビは、その画像が従来のプラズマや液晶より優れていること、より薄く作ることができることは、2007年、SONYの発表時に明らかでした(それゆえかなりの評判であった)。また当時から、大型化することが技術的な困難な課題であることも報じられていました。この大型化の課題にこたえた点で、おそらく業界内部の関係者は驚嘆したであろうと思われます。その点で、従来技術の発展ではなく、一つの新しい革新的開発と見るべきでしょう。年明け早々の米国からのニュースで、企業の販売戦略のありかたと製品開発の姿勢がいかに大切かを知らされました。 例年以上に寒さの厳しい1月だといわれています。どうか、風邪などひかれませんようご注意ください。そして今年一年、何とか健康で、辰の昇運に皆様とともにあやかっていきたいと願っております。
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