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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第50回セグロセキレイ


第50回 2006/01/01
セグロセキレイ


(48)セグロセキレイ「スズメ目セキレイ科」50-1-300
    英名:Japanese Wagtail
    学名:Motacilla grandis
    漢字表記:鶺鴒
    大きさ:21cm

セキレイの仲間で、国内で普通目にできるのは、セグロセキレイ、ハクセキレイ、そしてキセキレイの三種類です。今回は、日本でしか繁殖していないセグロセキレイを中心にセキレイの話をしてみましょう。

日本にいるセキレイは、この3種類に限らず、シルエットや飛び方、そして尾を上下に頻繁に振る動作を見る限りほとんど区別がつかないほどよく似ています。(中国に多いイワミセキレイだけは尾を左右に振るといわれていますが、残念ながら確認できていません) 鶺鴒の漢字に表されるように、背筋がピンと伸び、冷たいほどの端麗な容姿を誇ります。また、ヒヨドリと同じように、波型に飛んでいきます(ただしヒヨドリの飛ぶ波形の方が大きいのですが)。英名の最初の部分wagとは、上下に揺さぶること、tailとは尾のことで、尾を上下に振る動作がそのまま名前に使われています。それではこの3種類の区別を付けていきましょう。

まず鳴き声です。鳴き声の最も澄んでいるのがキセキレイ、その次にハクセキレイ、そして濁りが入っているのがセグロセキレイです。カタカナで表記するのは難しいのですが、あえて書きますと、「チ、チ、チ」と地声でなくキセキレイ、「チッ、チッ、チッ」のハクセキレイ、最後に「ジッ、ジッ、ジッ」と濁るのがセグロセキレイといえます。わがセグロセキレイは少なくとも美声とはいいがたいものがあります。

次に生息場所ですが、キセキレイは水辺からあまり離れることはありません。かなり高度の高い渓流域まで遡上し、川を中心に生活します。単独でしか見かけたことはありません。集団となることはないように思われます。セグロセキレイも水辺を好みますが、高い山間部では見かけません。大体2羽でいるところが観察されます。雌雄同色ですから、これが番なのかどうかは繁殖期以外には判断できません(繁殖期には雌雄の番で育雛します)。それに対して、ハクセキレイは必ずしも水辺ばかりではなく、結構水場から離れた田畑でも、数羽単位で餌を探しているところをよく見かけます。またハクセキレイだけが冬場、集団で塒(ネグラ)を形成し、時として1,000羽を超える個体が一本の木や橋げたなどを塒として朝を迎えるようです。実際に観察したことがあるのは、埼玉県桶川市の北本市との境、車の往来の激しい国道17号線のすぐ側の1本のマキの木に夕方4時過ぎ、次第に夕闇が増してくる頃、次々とハクセキレイがまさに突進するかのように飛び込んでいくのを度々見かけました。都市鳥の研究で著名な、唐沢孝一先生の著作でも、渋谷の街路樹を塒とするハクセキレイが写真入で紹介されています(「ネオン街で眠る鳥たち」・朝日新聞社)。

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姿、形の違いは、まず胸と腹部から腰にかけて黄色なのがキセキレイ。上の写真をご参照ください。個体差があり、なかには胸から腹部にかけてあまり黄色が目立たず、その部分が白っぽいキセキレイもよく見かけますが、少なくとも腰の部分だけは黄色です。腰の部分を見れば他のセキレイの仲間と間違えることはないでしょう。ただし、冬にハクセキレイの若鳥で、顔にうっすらと黄色味がかる個体を見かけることがあります。初めて見かけたときには、キセキレイの若鳥かと勘違いしたものです。キセキレイの顔は黄色くありません。

さてハクセキレイとセグロセキレイの形態の違いです。セグロセキレイという名前どおり背中が黒いのがセグロセキレイですが、それにとらわれると間違います。ハクセキレイも夏場には背中が真っ黒になります(冬は灰色です)。背中ではなく、顔で見分けるのが簡単でしょう。ハクセキレイは、白い顔のなかに眼の部分を横切る明確な黒い線(過眼線)がありますが、セグロセキレイにはこの過眼線はありません。セグロセキレイでは、眼の部分を境に顔の下部全体が黒く、その上部が眉のように白く(眉班)さらにその上の頭部はまた黒くなります。顔をみて、黒い過眼線があるのがハクセキレイ、白い眉班があるのがセグロセキレイと覚えておけばよいのではないでしょうか。大きさは、キセキレイが最も小さく、ついでハクセキレイ、そしてセグロセキレイと大きくなりますが、ハクセキレイとセグロセキレイはほぼ同じような大きさに見えることもあります。キセキレイ<ハクセキレイ≦セグロセキレイといったところでしょうか。

さてハクセキレイとセグロセキレイの形態の違いです。セグロセキレイという名前どおり背中が黒いのがセグロセキレイですが、それにとらわれると間違います。ハクセキレイも夏場には背中が真っ黒になります(冬は灰色です)。背中ではなく、顔で見分けるのが簡単でしょう。ハクセキレイは、白い顔のなかに眼の部分を横切る明確な黒い線(過眼線)がありますが、セグロセキレイにはこの過眼線はありません。セグロセキレイでは、眼の部分を境に顔の下部全体が黒く、その上部が眉のように白く(眉班)さらにその上の頭部はまた黒くなります。顔をみて、黒い過眼線があるのがハクセキレイ、白い眉班があるのがセグロセキレイと覚えておけばよいのではないでしょうか。大きさは、キセキレイが最も小さく、ついでハクセキレイ、そしてセグロセキレイと大きくなりますが、ハクセキレイとセグロセキレイはほぼ同じような大きさに見えることもあります。キセキレイ<ハクセキレイ≦セグロセキレイといったところでしょうか。

下の右はハクセキレイ、左はセグロセキレイです。一目で顔の白黒のバランスの違いがお分かりいただけると思います。

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冒頭にもふれましたが、セグロセキレイは日本の固有種で、北米や欧州のバーダーが日本に来て真っ先に注目するのがこの鳥です。これに反して、ハクセキレイはユーラシア大陸全体に生息しています。ハクセキレイの亜種、ホオジロハクセキレイは、過眼線が全くなく、広くユーラシアに生存し、国内でもまれに観察されます。下の写真をご覧ください。(香港にて撮影したもの)。

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古事記には、イザナギ、イザナミの命がセキレイの尾の動作を見て交合の方法を知ったというくだりがありますが、このことから、セキレイの異名である、「オシエドリ(教鳥)」や「コイオシエドリ(恋教鳥)」、「コイシドリ(恋知鳥)」が派生したものと思われます(古事記にでてくる鳥は多いのですが、このセキレイがファーストバッターです)。また、尾を上下に振る動作から、「イシタタキ」、「ニワタタキ(庭叩)」、「ニワクナブリ」の異名が付けられています。

セキレイは秋の季語。

 
鶺鴒のなぶり出しけり山の雨  小林一茶
鶺鴒よこの笠叩くこと勿れ  正岡子規
世の中は鶺鴒の尾のひまもなし  凡兆

また、短歌ではこうも歌われています。

 
鶺鴒の来鳴くこのごろ 藪柑子はや色づきぬ冬のかまへに  伊藤左千夫

水辺だけでなく、公園や畑でも見ることのできるセキレイ、ハクセキレイかセグロセキレイか見分けてみてください。

注:写真は、画像上をクリックすると拡大します。