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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第48回ウミネコ


第48回 2005/11/01
ウミネコ

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(46)ウミネコ「チドリ目カモメ科」
    英名:Black-tailed Gull
    学名:Larus crassirostris
    漢字表記:海猫
    大きさ:46.5cm

カモメの仲間の中では中型の部類の海鳥で、留鳥です。名前のいわれは、この鳥の鳴き声、聞きようによっては猫の声とも聞き取れるところから付けられたものでしょう。次のURLを開いていただければその声が聞こえます。
http://www.asahi-net.or.jp/~yi2y-wd/a-uta/uta-umineko.html

また、英語名もこの海鳥の特徴をよく表しています。飛んでいる状態を上から見ますと、尾の部分に黒い帯が明確に現れますが、成鳥で尾に黒い帯があるのはカモメの仲間では、このウミネコだけです。ただ、ユリカモメも、若鳥の期間だけ同じような黒い線が出ますが、成長とともに消えていきます。 下の写真をご参照ください。

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外見上の大きな特徴の一つは、緑味を帯びた黄色く太い嘴の先が黒くさらにその最先端が赤くなっていることです。一回り大きなセグロカモメやオオセグロカモメの嘴の先端は黒い部分がなく、下嘴に赤い斑があります。また、ウミネコの脚が黄色いのに対して、セグロカモメ、オオセグロカモメはピンク系の色をしていますので、とまった状態で、嘴の先端と脚を見れば、ウミネコなのか、セグロカモメなのかは容易に区別できます。また、一回り小さいカモメもウミネコと同じような黄緑色の肢をしていますが、嘴の先端には赤もしくは黒の部分がなく、形状もほっそりした感じがあります。下は、ウミネコの幼鳥で、通常カモメの仲間は成鳥となるのに4年間かかるといわれています。

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世界的な分布で言いますと、北西太平洋だけに固有なカモメです。国内では、広く分布していますが、岩手県椿島、宮城県陸前江ノ島、青森県蕪島(かぶしま)、山形県飛島、島根県経島(ふみしま)と全て島に集団繁殖地があり、いずれも天然記念物に指定されています。ところが、これらの県ではいずれも県の鳥には指定していません。岩手県はキジ、宮城県はガン、青森県はハクチョウ、山形県はオシドリ、島根県はハクチョウといった具合です。普段あまりにも見慣れすぎているせいでしょうか、それとも容姿があまり綺麗とはいいがたいからでしょうか。目つきは鋭いのですが、結構色彩バランスの整った海鳥だと私には見えるのですが。 下は、2年目のウミネコ夏羽です。

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このウミネコとオオセグロカモメだけが国内で繁殖するカモメとして、いずれも集団繁殖することで知られています。天然記念物として指定されて長いこともあり、これらの集団繁殖地ではヒトを恐れることもないためその行動様式、営巣様式、ナワバリ意識の強さ、育雛様式などかなり詳しく観察され、多くの情報がインターネット上でも報告されていますので、ご覧になってください。観察が容易であることから、寿命も明らかとなり、最近では30歳を超える個体も発見されたようです。長寿の鳥ともいえます。

ウミネコは、時としてカモメ科の総称として使用されることもあり、俳諧の世界でウミネコが歌われても、チドリ目カモメ科のウミネコとは限りません。また、季語としては面白い使われ方をします。

春を表現するときは、「海猫渡る」または「海猫来る」。またウミネコの方言的表現(北海道、東北地方)である「ごめ」を用いて「ごめ渡る」とします。海猫と書いて、ごめと読ませることもあるようです。夏を表現するときは、「海猫孵(かえ)る」、「海猫の雛」。秋ともなりますと、成長した雛とともに営巣地を離れることに対応して、「海猫帰る」とされます。またこの時期にも立ち去らないウミネコもいるのでしょう、「海猫残る」も秋の季語で、ウミネコまたはごめだけでは季語としては機能しないようです。

 
渡りきて遠突堤のこぼれごめ   村上しゆら
ふぞろひの浮球ゆらし海猫渡る  ゆきの咲耶

以上の二句は春を歌ったものですが、次の句は秋を表しています。

 
海猫の巣立つ怒濤の日なりけり  水原秋桜子

俳句ではありませんが、島崎藤村も「津軽海峡」のなかで、「暗碧の海の色、群れて飛ぶ『ごめ』」と表現しています。海岸線に飛ぶカモメの仲間。よく見ればいつかはきっとこのウミネコに出会えます。

注:写真は、画像上をクリックすると拡大します。