第35回 2004/10/01 |
カケス |
(33)カケス「スズメ目カラス科」
英名:Jay 学名:Garrulus glandarius 漢字表記:懸巣 大きさ:33cm それほど珍しい鳥ではありませんが、以外と見たことがない方の多い、カラスの仲間で、しかも結構目立つ鳥です。私自身、子供のころには見かけたことがなく、初めてカケスを見かけたのは、1970年代のドイツ(当時は西ドイツ)ベルリン(西ベルリン)の投宿先のホテルの庭先でした。カラスより小さめ、ハト程の大きさに、羽の部分を彩る瑠璃色が何とも鮮やかで、欧州には、こんなきれいな鳥がこれほど身近にいるのかと感激したことを思い出します。 生息域はユーラシア大陸から北アフリカ、東南アジアまでとかなりの広域です。黒でイメージされるカラスですが、日本で黒くないカラスの仲間といえば、このカケス以外に、もっともポピュラーでヒトの居住域にも生息するオナガ、佐賀県を中心とした部分的な生息域のカササギ、高山地帯のホシガラスなどが直ちにあげられます。 頭頂部は白でその中に黒斑が目立ちます。(この部分が白くなく、後頭部と同色なのが、北海道に固有なミヤマカケスです。下の写真をご覧ください。)体全体は灰色味がかった青褐色、喉は白。何と言っても特徴的なのが、閉じたときの羽の下部(雨覆部)の色合いです。青の上に白と黒の横斑があり、光の当たり具合ではまさに瑠璃色に見えます。目の虹彩は白、瞳孔は黒で、目の周りから嘴にかけての部分が黒いので、双眼鏡で見るとちょっと意地悪そうな感じを受けるかもしれません。 通常、それほど高くない山間部のシイ、カシ、ナラ類の林に住み、他のカラスの仲間と同様雑食性ですが、コナラ、ミズナラなどのドングリは好物のようです。この鳥のひとつの特徴は、このドングリを地面に差し込んで蓄える習性があげられます。秋にドングリを喉に詰め込み、お気に入りの場所まで行ってひとつずつ差し込みます。さらに枯葉でその上をカムフラージュします。 観察記録では、1000メートル時として数キロに及ぶ遠距離地を保存場所として選択することもあるようです。一旦保存した場所から移動させることもあるようですが、平均一羽の保存するドングリは数百個単位といわれています。このドングリを集める様子は古来目撃されてきたようで、カシの木にちなんで、樫鳥、もしくは橿鳥(いずれも「カシドリ」)とも呼びなされたようです。冬にかけ、広葉樹のある市街地にも出てきます。さいたま市見沼田圃の雑木林などでも見かけることができます。なかなか用心深く、また木と木の間を飛び回る動作もすばしこく、木の陰にさっと回り込みますので、注意して観察していませんと見逃してしまいます。 英語名のJayは間違いなくこの鳥の普通の鳴き声を指したものと思われます。「ジェー、ジェー」とも「ジャー、ジャー」とも聞き取れるかなりの濁音の強いハスキーボイスです。普通の鳴き声と書きましたのも、多くの人の観察で、かなり多彩な声や音を鳴きまねできることが報告されています。他の野鳥の声にとどまらず、時としては犬やヒトの声さえ真似るといわれています。囀りの代わりに、体験的に学習した外からの音を再現しているのかもしれません。ちなみに和名のカケスは、この鳥が木の上に枯れ枝などを寄せ集めて、杯形に巣を懸けることからつけられたようです。 カケスは秋の季語。
またカケスの別名、カシドリとしては、かし鳥に杖を投げたるふもと哉(基角)とも歌われています。タカ類の泣きまねがことに上手といわれるカケス。是非この鳴真似を一度聞いてみたいと願っています。最も既にこの芸人の芸術的サウンドを聞いていて、本物と間違っているのかもしれませんが。 |
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