前回は、埼玉県の「県の鳥」を取り上げましたので、今回は日本のシンボルの鳥、「国鳥」である鳥、キジについて見てみましょう。キジが国鳥に指定されたのは、戦後の昭和22年(1947年)のことです。キジ以外に、日本固有種といいますと、セグロセキレイなどが思いつきますが、童話の世界の有名人(?)でもあり、また人里近くの野山に良く見られること、そして何よりオスの羽の示す華やかさがこの鳥を日本のシンボルと決定させたのでしょう。国のシンボルでありながら、季節と場所によっては狩猟鳥として狩猟が許可されているようです。家禽類として例えばニワトリのように飼育され、「キジ鍋」をメニューに載せているレストランや料亭があるくらいです。あまり目くじらを立てるつもりもありませんが。
現在使用中の1万円札の裏側に、スカシ部をはさんで左側にオスが、右側にメスの図柄が印刷されています。茶褐色の1万円札の裏紙では、オスのカラフルな衣装が泣こうというものです。上に参照した写真をご覧下さい。オスの目の周りの真っ赤な肉垂が意表をつきます。オスの色彩の多様さは、個々に説明するより写真を見ていただくのが第一です。全身が、光沢を帯びた緑色味を持っていますので、見る角度によってはもっと黒っぽく見えたり、濃い紫色っぽく見えたりします。大きさは、長く延びた尾羽を除きますとだいたいニワトリのようなものです。下はメスのキジです。
かつては、わが国にはこのキジ以外に、トウカイキジ、シマキジそしてキュウシュウキジと合計4亜種のキジがいたとされますが、互いの亜主間の交雑や、ヒトの飼育と放鳥により、最近の鳥類図鑑ではこれら4亜種間の区別は不可能と記載されています。但し首に白い輪のある「コウライキジ」(対馬から朝鮮半島、ユーラシア大陸に広く生息。また北海道の一部に昭和初期に移入されたものが見受けられるという)とは、歴然と区別されております。
春先から初夏までの繁殖期には、オスはナワバリを持ち、そのナワバリをメスが回りながら番の組み合わせを構成しています。営巣は一度、6〜12個程度の卵をメスが抱卵します。この時期の、縄張りをめぐるオスどうしの争いはかなりのもので、高く飛び上がり、互いの足の裏にもつ凶器、「蹴爪」を振るい合う様子を観察したことが一度ならずあります。どうも繁殖期を過ぎる秋から翌年の春が来るまで、オスはオス同士、メスはメス同士グループ化して生活するようです。
キジの鳴き声を「ケーン、ケーン」と表示することが多く見受けられますが、私にはオスキジの声がそのように聞こえるとはとても思えません。次のサイトではキジの声が聞こえますので、あなたはどのように聞きなしなされますか。
http://www.asahi-net.or.jp/~yi2y-wd/a-uta/uta-kiji.html
キジもしくは雉(雉子)は、春の季語ですが、「羽抜雉」は夏の季語です。日本古来からの鳥とあって、多く俳句や和歌に歌われています。
ちちははの しきりに恋し 雉子の声 芭蕉 やまたづのむかひの森にさねつどり雉子啼きとよむ声のかなしさ 斉藤茂吉 |
キジの声を聴くことのできる地域もだんだんと狭くなりつつあるように思われます。ニワトリなみに飼育ケースの中でしか見うけられなくなるようなことのないように、「地域開発」のキャンペーンには注意の目を向けるべきではないでしょうか。